代理人が自己の名を出さず本人の名だけを示して行為をした場合は、代理人の名は出ておらず、いわゆる代理における三面関係は存在しない。その為、当該行為の効果の本人への帰属を認めることは困難のようにも思われる。
しかし、この場合も、とにかく本人の名は告知されており、実質的には顕名主義(99条1項)の要請を充たしており、相手方に対しても効果帰属の主体は告知されているから、このような場合であっても、当該行為の効果は有効に本人に帰属するものと考える。
また、このような代行方式による場合も有効な代理として扱うことは、我が国の取引の実際において、契約書などに代理人の氏名を記さずに直接本人の氏名のみを記し、本人の印を押すという形式で行為がなされることが珍しくないという実情にも合致する。
代理人に特にそのような権限(代行権限)が与えられている場合には、代理人に準じて扱うべきである。
以上