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"かなり使えた"【川村明宏のジニアス記憶術】

代理と委任の関係(有因説) [代理(3)]

 代理関係は委任などの対内関係の対外的効果にすぎないとして、その独自性を否認する立場がある。しかし、委任などの関係は常に代理を伴うわけでなく、しかも、代理は委任などとは異なり義務を伴うこともなく、単に本人に権利義務を発生させる地位にすぎないのであるから、代理関係は委任などの対内関係とは別個のもの(独自性がある)として観念すべきである。

 このように代理関係を委任などの内部関係から独立したものであると見る場合、委任などの対内関係の消滅が代理関係にどう影響するかが問題となる。

 思うに、この問題は当事者の意思を合理的に解釈して決せられるべき問題である。確かに、代理関係と対内的関係とは別個のものではあるが、対内関係が消滅したにもかかわらず、なお、代理関係だけを存続させる意思を持つことは一般的にあり得ないから、委任関係と代理関係とは有因(一方が消滅すれば他方も消滅)の関係に立つと解すべきである(有因説)。

 ただ、このような有因説では、委任契約が取り消されれば当然に代理権も遡及的に消滅し、既に行われた代理行為は無権代理行為となるから、取引の安全が脅かされる。この点で、無因説にも合理性があるが、しかし、有因説のもとにおいても、表見代理の規定によって第三者を保護することができるから、不都合はないと解する。問題は、如何なる表見代理が成立するかである。

 まず、110条の表見代理ではない。また、109条の表見代理も観念しにくい。何故なら、取消しにより代理権のある旨の表示自体も打ち消されたとみる余地があるからである。

思うに、112条の類推適用によって第三者を保護するのが妥当と解する。
112条の表見代理は、一度は基本代理権が与えられていた場合に関するものであり、代理権が遡及的に消滅する本件のような場合には適用の余地はないが、しかし、かつて代理権があった場合に類すると見ることができるから、112条の類推適用は可能と解する。このような表見代理規定の類推適用により第三者を保護するアプローチは、利益衡量としても妥当な見解である。

無因説では、第三者の善意・悪意にかかわらず第三者を保護する結果となるが、これは過ぎたる保護であるのに対して、表見代理の場合は第三者の善意・無過失が要件となるから、本人の保護とのバランスも充分に図り得る。

以上





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